2015年7月2日木曜日

なぜRPGの『毒』は役に立たないのか?

7月ですね。どうも、ノンジャンル人生です。FEif欲しいんですが、いろいろあって買うことが出来ません。NEW3DSLL白も欲しいです。ツクールのVXAceも欲しいです。イカもやってみたいです。買えません。哀れ。

で、今回はRPGにおける『毒』について考察しようと思います。ほとんどのRPGで序盤から登場する状態異常としておなじみですね。ちょっとずつ減ってゆくHP、歩くと画面が点滅してうざったいと思った人は多いと思います。余計に買っておいた毒消し用アイテムをちまちま使いながらダンジョンを攻略することは、もはやRPGの定番・お約束と言えます。

ただ、それはあくまでモンスター側がプレーヤーキャラに使う時の話。プレイヤーがモンスター側に攻撃手段として使う『毒』について疑問に思われたことのある方はいらっしゃるでしょうか?よくRPGでは毒状態にする魔法を覚えますが、覚えたきり一度も使ったことのない人は結構いるはずです。理由は、多くのRPGの『毒』は致命的なほど役に立たないから。少ないダメージ、ボス戦での成功率の悪さなど、さまざまな問題を抱えているのが毒なのです。そんな毒について、詳しく紐解いてゆこうと思います。今回も長めです。


毒というとドラクエのイメージを思い浮かべる人は多いと思いますが、実はドラクエには相手に毒を与える呪文は存在しません。「どくの息」という特技はありますが、プレイヤー側の技としてはシリーズでもマイナーです。一方FFだとポイズンやバイオという魔法があります。前者は毒のみをかける魔法、後者は毒+ダメージの魔法です。他の有名RPG、無名のRPGでも魔法使いが毒魔法を習得するケースは多いです。

しかしその割に使ってもらえない毒魔法。その問題はダメージの計算方法にあります。多くのRPGでは毒のダメージを「HPの割合」を元に計算しています。例えば「HPの10%前後のダメージを与える」のパターンだと、HP100のキャラクターは毎ターン10のダメージを受け続けることになります。しかし一般的なRPGの雑魚戦は1~3ターンほどで終わってしまう傾向にあります。その場合わざわざ少ない、かつ遅効性のダメージのために一回分の行動を割く必要があるのかという問題に直面してしまうのです。

もっと具体的なことをあげます。例えばHP100ほどの敵が三体いて、それに対し味方が三人いるとします。大半のRPGだと1ターンに一体以上は敵を倒せるように設計されています(あまり一体にターン数がかかると、プレイヤーは投げ出してしまうからです)。そうなると味方ひとりあたりのダメージの期待値は最低でも30~50ほど。それと比べると1ターン分の毒の10ダメージはあきらかに小さすぎます。さらに敵のHPが200に増えると期待値は100に対し毒は20、300に増えると150に対し30と、どんどん差が開いてしまいます。これがダメージの低さを感じる原因なのです。

じゃあだったら毒でHPが減る割合を大きくすればいいかというと、それはそれで問題が発生します。例えば期待値と同じ30~50ほどのダメージを与えるためには、HPの30~50%の割合で減らし続けなければいけません。そうなると、今度はプレイヤー側が食らう毒のダメージが大きくなりすぎてしまいます。ダメージと毒の両方の回復にリソースを回さなくてはいけなくなり、攻撃に手を回すことが出来ません。安直に割合だけ増やすのは、自らの首を絞めるだけになります。


一方ボス戦に目を向けると、ボスに毒の状態異常が成功しないケースが多いです。毒に完全耐性を持っていることも少なくありません。HPが多いボスならば毒を有効に活用できそうですが、わざわざ失敗するようにしているのには理由があります。例えば先ほどのようにHPの10%の割合でダメージを与えられるとします。そうなるとHPをゼロにするには10ターンかかります。この場合、最適な作戦は、ただ10ターン防御し続けることです。こうすればプレイヤーが何も考えなくても敵は勝手に倒れてくれます。シンプルですが非常に強力な作戦です。しかし、RPGにおいて華であるボス戦すべてでこの方法で勝利できるとしたらどうでしょうか?どんな相手でも同じことをすればいいだけなので、ボス戦がとてもつまらなくなるのが目に見えて分かります。だから毒は効かないのです。


こういった問題があったため、毒は役に立たなくなってしまいました。毒魔法を習得しても魔法欄に置物のようになってホコリをかぶっていること、ありませんか?個人的に、せっかく習得しても役に立たないならつまらないなと思います。ならば逆に、今度は毒を有効に活用した例をあげようと思います。

毒の見直しで有名なのは『世界樹の迷宮』。このゲームの毒はHP割合ではなく固定ダメージに変化しています。そして恐ろしく強い上に序盤から猛威を振るいます。そして自身が使えば強力な戦力にもなります。被ダメージ量は多くても、もともと緊迫感のあるダンジョン探索が売りのゲームなので、このゲームとの相性はバッチリです。(世界樹はPQしかやったことが無いため、詳しい解説が出来ないのが残念です^_^;)
※追記:世界樹の迷宮Ⅳを2016年にクリアしました。毒の使い勝手は最高でした。強力な固定ダメージであり、ボスにも有効、なにより使っていて楽しかったです。

先日プレイしたフリゲRPG『嘘つきジニーと磔刑の国』も、良く考え抜かれていました。今作は毒ではなく「衰弱」という名前(効果は実質毒)。状態異常には深度というものがあり、何度も衰弱技を使って深度を上げると、その分与えるダメージが大きくなるというもの。ボス敵にも有効、それどころか相手によっては必須といえるほど強力な火力を発揮するのが面白いなと思いました。短編かつ高難易度RPGなので、興味をもった方は触ってみるのをオススメします。

嘘つきジニーと磔刑の国

その他のRPGでも、HPだけ多い敵への対策手段として毒が有効だったり、一部のボス敵に効いたり、能力値減少の追加効果があるなど、しっかりと設計されているゲームもあります。効果や有効な場面を考えれば、毒をゲームを面白く要素として活用できるのです。

いかがだったでしょうか。RPGにおいて何気なく存在する毒にも、面白いほど考察の余地があります。作る側にはぜひ再検証してもらいたいですし、プレイヤーもゲームごとに役に立つかどうか考えてみて欲しいですね。



おまけ
現在自分が作っているフリゲ用RPGでも毒のダメージ計算の見直しをしています。具体的には、毒を食らった側の「力(STR)」の値をダメージに出来ないかというものです。まだまだ実験の段階ですが、今のところバランス的に良好です。雑魚戦では優秀なダメージソースになる上、ボスでもダメージがインフレしません。屁理屈的には、力有り余っている奴はダメージ受ける量も大きいって感じです。もうちょい調整しつつ、面白いゲームができるよう仕上げたいと思います。