2016年1月11日月曜日

考察!なぜRPGの主人公の村は焼かれるのか?

※投稿日がおかしくなっていますが、正式な記事の公開日は2016年1月30日です。

どうもノンジャンル人生です。様々な方の「THE GOLDEN FRONTIERS:序幕」プレイ報告をお聞きし、大変感謝しています。本編の製作も励んでいこうと思います。

そういえば去年new3DSLLを購入しました。ずっとやりたかった「ゼノブレイド」の携帯機版をプレイ中です。こりゃ楽しいですね。でかいやつに挑んで死にまくり、高い所から落下して死にまくっています。あとは「モンハンクロス」、初モンハンですが楽しいです!クック先生50体狩りました。


で、今回は個人的にずっと気になっていた話題をしようと思います。それは「村焼き」です!

・・・はぁ?
っという声が聞こえてきそうですが、もう少しお付き合いください(^^;)

ファンタジーの物語では、平和な村が敵対する者たちによって焼き払われるという展開が多く見受けられます。ある時は巨大な帝国の陰謀で、ある時はモンスターの襲撃で、小さな村に火を付けられ、跡形も残らないという展開がなされます。

日本のRPGにおいても例外でなく、特に主人公が暮らしていた村が焼き払われ、それをきっかけに冒険へ旅立つケースが多々あります。例えば有名なRPGだと(ネタバレにより反転!)『ドラゴンクエストⅣ』『テイルズオブファンタジア』『ゼノギアス』が挙げられますね。容赦なく焼かれる(または焼かれた後の)村を見て、幼少期にトラウマになった人もいるかと思います。

ではなぜRPGの主人公の村はわざわざ焼かれなくてはいけないのでしょうか?この謎を、シナリオの観点から考察してみようかなと思います。(あくまでも一考察なので、これが答えだというものではないですが)

①ピクサーのシナリオの法則から見る、村が焼かれる意義

…ピクサーと村焼き。なんかこの組み合わせ、業が深い感じがしますね。もちろんピクサー作品で村焼きが行われたという話ではないですよ(全部は見てないので、実は行われているかもしれませんが)。お伝えしたいのは、ピクサーが提唱するシナリオの書き方を見ると、「村焼き」は物語の進め方として合理的ではないかということです。

まずはこちらの記事をどうぞ。

はてなブログ:Gamers, Be Ambitious様
ピクサーの「脚本の書き方講座」が素晴らしかった

いかがでしょうか?この記事でピクサーはシナリオにおいて、

「主人公には弱点がある」
「嵐雲を起こす」
「大切なものを失う」
「主人公に屈辱を与える」
「主人公を岐路に立たせる」

ことの大切さを語っています。物語の発端において事件を起こすのは、シナリオを書く上での鉄則となっています。その中で主人公が大切なものを失うということは、失ったものを取り戻すという、主人公が行動する強い動機付けになるのです。

主人公の村が焼かれる展開も、この法則にのっとって進んでゆきます。村で平和で暮らす主人公は、けして心身が強い人物ではありません。外敵からの襲撃により、なすすべなく自分の故郷を焼かれて失い、主人公は失望します。居場所を失い、彼は否応なしに旅立つかどうかの選択に立たされるのです。

一見ただのお約束の展開のように思える「村焼き」ですが、実はシナリオの法則をしっかり守っています。シナリオの法則は、見る側を惹きつけ、序盤で飽きさせないためのメゾットでもあります。また、物語の基礎がしっかりしているため破錠しにくく、書く側にとっても扱いやすいというメリットもあります。

ただし、ピクサーのシナリオと村焼きの展開では、一点大きな違いがあります。それは焼かれた村は取り戻すことは出来ないということです。そうなると失ったものを取り戻すという動機付けが出来ないので、主人公の動機は別のものに変わります。例えば、村が焼かれた時に攫わせた人や物を取り戻すことや、村を焼いた人物や組織への復讐することに移行するのです。目的を見つけるまで、主人公が放浪するパターンもあります。

最終的には平和を取り戻すことが大目標なので、広義ではこの法則からは外れてはいません。しかし完全に失われてしまうものがあることで、冒頭から強烈なインパクトをもたらすことが出来ます。こういった面を考えると、物語冒頭で村が焼かれることが、いかに合理的であるかが再確認できますね。

②村が焼かれることで起こる、強制的な自立

日本のRPGと欧米のファンタジーRPGと比較すると、日本では18歳に満たない少年を主人公になるケースが大多数を占めています。これはRPGが最もよく売れていた時期に、メーカーがRPGを小中高生向けて販売展開したことが大きいのだと思います。主人公をプレイヤーの年齢に合わせることで、より感情移入させるのが狙いだったのでしょう(現在だとプレイヤーの年齢幅が広がって、あまり意味はなくなったと思いますけど)

しかし経済的、または精神的に自立していない少年が、理由もなく冒険し始めるのは不自然です。ファンタジーRPGの世界では一歩外に出ればモンスターに襲われるため、意味もなく旅をするのは危険でしょう。

さて、そういった主人公を冒険に誘わせるにはどうすればいいか。その最も手っ取り早い方法は、主人公を保護する居場所を取っ払うことです!経済を支援してくれる家、自分を慕ってくれる友人、外敵から守ってくれる街、そういったものがなくなった時、主人公は自分の身を自分で守らなければいけません。

村が焼かれると、そういったものを一気に取っ払うことが出来ます。全てを焼きはらうことも出来ますが、あえて主人公以外の生き残りを設定することで、より綿密なドラマを生み出すことも出来ます。

一見強引な方法かもしれませんが、①の法則との合致により、意外なほど説得力が出ます。また、この方法だと村を出たことのない少年の視点から物語を描けるので、プレイヤーと同じ視点で世界観を見せられるメリットもあります。

③「炎」という存在の恐ろしさを見せつけるための村焼き

RPGにおいてたまに問題となるのは、魔法を手軽に使えすぎて、魔法の価値が下がるということです。例えば現実の炎はちょっと触れただけで火傷になり、治癒には長い時間がかかります。しかしゲームの中だと分かりやすく強さを表現するために、強力な呪文を数秒のコマンド決定で実行することが出来ます。もちろん回復も数秒です。こういった風に手間いらずで魔法を使えてしまうと、プレイヤーに「魔法はダメージを与えるための存在」として認識させてしまう可能性があります。

そういった時の対処法として、イベントで魔法の威力を表現するという手があります。例えば、主人公がお使いで村を離れている間、村が魔法使いに襲われて焼き払われたとしたら。普段はエフェクトとダメージでしかない炎が、イベントとして使われることで恐ろしいものとして表現されるのです。

これは他の属性魔法でも表現できますが、やはり炎は被害の大きさと赤という強い色彩によって大きなインパクトを与えることが出来ます。

例え火を放った方法が魔法でなくても(兵器や放火など)、炎を強く見せることで、相対的に火の魔法の価値が上がります。また、火の魔法の価値を高めることで、他の同威力な魔法の価値も高めることが出来るのです。

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いかがだったでしょうか?村焼きをただの演出表現のパターンと捉える方もいらっしゃるでしょうが、その演出にも物語に与える大きな役割があることが分かります(もちろん一考察ですが)。RPGでは、「村を焼かれる」というきっかけから深いドラマが生まれ、名作と呼ばれる作品が次々誕生しました。あくまで今回の考察は「主人公の村」に絞りましたが、主人公に限定しなくても沢山の「村焼き」を行った名作が発見できます。(ネタバレにより反転!)RPGの村焼きで忘れていけないのはファイナルファンタジーⅣと幻想水滸伝Ⅱでしょう。

これを機に、あなたもぜひ村を焼いてみませんか?あなたもRPGのドラマを深く考察してみませんか?きっと新たな発見があるはずです。