2018年3月1日木曜日

2DRPGに対する危機感の話。

どうも、ノンジャンル人生です。ちょっと気になる話題を見つけたので、ブログに書いていこうと思います。

昨日2/28に突然リリースされたSteam版クロノ・トリガー。その移植度に関して問題が上がっています。本作はスマホ版のベタ移植で、UIやフォントがPC向けに最適化されておらず、Steamの海外コミュニティで炎上し、現在低い評価を受けています。

もうひとつ気になったのがグラフィック。むしろこちらのほうが大きな問題だと思っています。高解像度化を謳ってはいますが、これが違和感のある作りになっています。Steamに載せられていた、こちらのスクショを御覧ください。クリック推奨。


サムネイルだと一見綺麗に見えますが、画面サイズで見てみるといくつもの問題点が見受けられます。

例えばシルバードの光沢がなめらかになっているのにもかかわらず輪郭が角ばっています。雲のつなぎ目におかしい部分があり、キャラクターの顔も潰れてしまっています。多分これは画像を高解像度化するツール(waifu2xみたいなもの)を使い、タイルセットやキャラクターチップを機械的に解像度を上げたのだと思います。こういったツールは見た目は綺麗にしても、並び重なる画像同士の整合性は調整しません。それゆえ、こういった違和感のあるグラフィックになったのだと考えられます。

本日Steamと同時にアップデートされたスマホ版でも同じことが起こっており、スマホゲームメディアの『ゲームキャスト』さんでもグラフィックの問題点を指摘しております。
http://www.gamecast-blog.com/archives/65913674.html

※追記
AUTOMATONが最近の記事で詳細が取り上げられていました。
http://jp.automaton.am/articles/newsjp/20180307-64088/

とりあえずこのブログでSteam版クロノ・トリガーを批判するつもりはありません。IGN・AUTOMATONなど多くのメディアで本作が低評価を受けていることを伝えておりますし、スクエニも先日同じような問題が起きたSteam版ロマサガ2のように修正を入れてくるでしょう。

今回取り上げたい問題はそこではありません。2Dロールプレイングゲームに対する危機感の話です。最近ずっと思っていたことと一連の騒動が繋がったので、ここで書いていこうと思います。

現在国内のコンシューマーでは2DRPGのパッケージソフトは“ほぼ”発売されておりません。据え置き機ではPS2期から2DRPGは3D化の流れに淘汰され、携帯機でもDS・PSP以降では見る機会が減りました。今でも精力的に出し続けているのは、『ディスガイア』などを発売する日本一ソフトウェアのSRPG、『ドラゴンズクラウン』などを開発するヴァニラウェアのARPGくらいでしょうか。

2DRPGが廃れたのが古臭いドット表現だからという意見もあると思いますが、一概にそうとは言えません。現在海外のインディーズゲームではピクセルアートが再評価されて多くのヒット作を輩出しています。日本でも絶大な支持を誇る『UnderTale』を筆頭に、『Stardew Valley』『ショベルナイト』『VA-11 Hall-A』『Hyper Light Drifter』『One Shot』『Owlboy』など、ピクセルで美しく表現された作品を挙げるときりがありません。

Stardew Valley

ターン性バトル、またはJRPG表現が古臭いからという話も上げられるかもしれませんが、去年海外で高く評価された『ペルソナ5』というRPGが、その説に一石を投じています。

さらに付け加えるなら、2Dであったとしても、解像度が低かったとしても、一般の方に面白いと思われたRPGは良い反応を受けてます。それを裏付けるのが、自分の今までもぐらゲームス様に寄稿してきたフリーゲーム記事です。中編~長編RPGの『Tactical Chronicle』『Mystic Star』『Time Flow』『WIZMAZE』『箱庭えくすぷろーら』『芥花』の記事は、「はてなブックマーク」にて評価をいただきました。筆者としてもありがたいことですが、自分はあくまで紹介しただけに過ぎず、そういった魅力ある作品だったからこそ注目されたのだと思っています。

しかし、これだけの材料が揃っているのにも関わらず、2DRPGは中々リリースされません。販売側・購入側に「売れないもの」という認識を払拭しない限り、この問題が解決することはないと思います。

このようにメーカーで長い間開発されないことで起こりうる問題があります。それは2DRPGの開発技術の断絶です。どうすれば美しいピクセルアートが表現できるか、どうすれば2Dに最適なUIを形成できるか、2Dだからこそ活きるゲームデザインはどんなものか、そういった技術が開発されないことで忘れ去られていくのが目に見えてます。

フリーゲーム界隈を見渡せば、2Dでの高度な表現や、デフォルメに適応したシナリオやゲーム性がある作品は沢山あります。しかしあくまでノウハウが継承されない個人の技術であり、またシステムの多くがツクールやウディタに依存しており、市場へ技術が活かされる可能性は低いです。

2Dを活かしたスマホのソーシャルゲームもありますが、そもそもゲームのルールが違うので、こちらから技術を持ってくるのも厳しいかもしれません。スマホに移植された旧作RPGも操作性に関して評価があまり良くなく、そもそもスマホで上手く技術の継承がなされているのであれば、今回の問題は発生しなかったでしょう。

打破出来ないいくつもの状況が重なっており、その認識の低さが今回のクロノ・トリガーの移植で表面化したと見ています。国内最大の2DRPGのコンテンツホルダーであるスクウェア・エニックスですら、2Dに最適なドット表現を安定してリリース出来ていません。SFCのRPG史上で最高クラスの評価を得たクロノ・トリガーの移植でさえこんな状態であるなら、国内で作られたドット表現のRPGの新作が再び注目されることなど、夢のまた夢です。

こういった状況の中で「いや!俺が作ってリリースしてやる!!」と私自身が言えないことが、何よりも悔しいことです。長期制作してきたフリーのRPGですら、完成にたどり着けていない自分が腹立たしい。ここまで問題提起して来ましたが、RPGを作る難しさは身をもって痛感しています。

RPGには、一時代を築いた黄金期があります。SFCからPSにかけて沢山のRPGがリリースされた時期です。FFVII以降3D作品も増えていきましたが、2D作もまた息が長かったはずです。あの頃のRPGの熱量に見せられて、開発者やファンがたくさん生まれました。あの魅力を、途絶えさせたくないのです。


何故、そこまで2Dにこだわるのかというと、3Dでは出せない魅力を感じているからです。自分のベストワンRPGは、PSの『聖剣伝説 レジェンドオブマナ』です。あのドット表現の美しさは3Dにない魅力があります。そして私は今でも、あの頃の2DRPGが成した美しいアートワークの進化の先を探し求めています。

3DのRPGはこれからも人気を博していくでしょう。なのでそこは心配していません。だからと言って2DRPGが消えて欲しくはありません。ですが、時間が経てば経つほど、あの頃を覚えている人も減っていくでしょう。

言いたいことを纏められずにこの話題を終えてしまうのは不本意ですが、これが今の自分の力の限度です。しかし、未だ私は諦めていません。