2016年6月20日月曜日

『FINAL FANTASY XII』:リマスターを機に、生まれるのが早すぎた正統派ファンタジーを紐解く

みなさんこんばんは、ノンジャンル人生です。
最近フリーゲームの話題を書けなくてモヤっとしてますが、どうしてもそういう時期は出来てしまうものです。(それでも面白そうなフリゲはしっかり目をつけています)

さて今年のE3が終わりました。正直今回は期待していなかったんですが、『ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド』が想像以上に良く、収穫があった回でした。

ただしこの記事で語るのはそのゲームではありません。E3開催数日前に発表された『FINAL FANTASY XII THE ZODIAC AGE』の話です。

FINAL FANTASYXIIは2006年に発売されたFFシリーズの第12作目で、本作はそのPS4リマスター版。「イヴァリース」と呼ばれる架空の世界を舞台に、小国ダルマスカとアルケイディア帝国で起きた動乱の裏側を描いています。ファンタジー色が高い美しい世界観であると同時に、初期ディレクターの松野泰己氏の作風である陰謀や政治色の強さが特徴です

オリジナル版は200万本以上のセールスを叩き出しましたが、これまでネット界隈では「評価の別れるFF」として語られておりました。シームレスバトルの採用、ガンビットと呼ばれる半自動バトルシステムの採用、作曲家が植松伸夫氏ではなく崎元仁氏に交代など、FFXIIはそれまでの「FFのルール」を大幅に覆しました。

物語は「ヴァン」と言う少年の視点から描かれております。ただし主人公である彼が世界を救う英雄譚的な物語ではありません。どちらかと言えばヒロインであるダルマスカの王女「アーシェ」がそのポジションであり、見せ場は空賊「バルフレア」の方が多いです。そういったシナリオも評価を分けた一因と言われています。(実は展開をちゃんと追えば、ヴァンにも世界の行く末を変えるような役割が与えているのですが、あまり知られていません)

ゲーム評価だけでなく、開発をしたスクウェアにも当時は一波乱がありました。映画版『FINAL FANTASY』の歴史的失敗と業績不振、FFの生みの親兼プロデューサー坂口博信氏の退社、有名シリーズを制作したスタッフ達の退社、そしてRPG黄金期時代のライバル「エニックス」との合併し「スクウェア・エニックス」の設立…。さらにFFXIIの開発自体も、延期に延期を重ね、その間松野氏が病気により降板、退社をしています。

ある意味、“いわくつき”とも呼べる本作ですが、「いろいろな問題を抱えた過去の作品」と呼ぶのは勿体無いほど、多くの魅力を持っています。そして自分にとっては特別思い入れのあるゲームでもあります。今回はFFXIIを私の視点から紐解いていこうと思います。

①広大なフィールドを自由に駆け抜ける

FFXIIは中規模なマップ同士を連結させて一つの世界を作り上げています。PS期までのワールドマップとダンジョンの切り替え式と、現在のオープンワールドの中間と言ってもいいでしょうか。ストーリー上行ける場所は制限されているようですが、実は進行具合によって、本来行く予定のないところに到達することが出来るのです。例えば軽巡洋艦シヴァ脱出後、ストーリーを無視して死都ナブディスまで行くことすら出来ます。広大なフィールドを自分の足で新しい地を開拓することこそがFFXIIの醍醐味と言えるでしょう。しかし、この時点で移動範囲が追加されることがアナウンスされないため(いつのまにか制限していたものが消えていたりする)、普通に物語を追ってプレイすると広いフィールドをお使いするだけなります。はじめてプレイした時はただ言われるがまま進めていたので、あまり楽しめませんでした。しかし数年後自由な遊び方を知ってやり直した時、このゲームに本気でドハマリしました

②ガンビットと呼ばれる戦闘AI設定の楽しさ

私が以前もぐらゲームス様に記事を寄稿したゲーム『Tactical Chronicle』を覚えているでしょうか?あの作品ではプレイヤーがパーティキャラのAIを設定し、オート戦闘で戦うことが出来ました。その原点はFFXIIのガンビットです。本来敵モンスターの行動パターンを決定するためのAIを、プレイヤーがキャラクター達に自由に設定することが出来るようになったのです。例えばHPが50%以下になった時回復を使う、モンスターの弱点属性に有効な魔法を使うなど、組み合わせ次第で無限の可能性のある戦闘パターンが出来ます。特に「モブ」と呼ばれるハンティングボスモンスター戦は「何もしなくても勝てる」ほど甘くはなく、これをいかに組み立てるかが戦術の鍵となります。個人的に本作の一番の熱い部分でした。

③イヴァリースと呼ばれる世界の徹底した作り込み

FFの世界観の特徴を誤解を恐れず言うのであれば、西洋東洋ごちゃ混ぜのトンデモワールドと言ってもいいでしょう。ファンタジー色強いシリーズでも出どころが全く違う召喚獣が仲間になったり、スチームパンク感や学園モノ、最新作では新宿すら出てきます。世界観統一された海外のRPGよりもより自由でぶっ飛んでいるのがFFらしさなのかもしれません。

それと比べてFFXIIは世界観が徹底統一されています。各地で様々な種族が生活し、そのバックグラウンドがしっかりと存在し、高度な技術にもちゃんとした理由付けがされています。一般人キャラの発言ひとつひとつにも、世界情勢の一編を垣間見ることが出来ます。

世界観はそのグラフィックにも表れています。例えばダウンタウンに住む人々の暮らしは、服装や肌の汚れできっちり表されております。モーグリやバンガのような種族はコピペで作られておらず、ひとりひとり服装や肌の色が違います。アルティマニアを開いて正直驚いています。

一方でこの作り込みには弊害も。それまでのFFのごちゃ混ぜ世界観は「魅せるところは魅せる」「手の抜くところは手を抜く」ことが上手く出来ていました。しかしFFXIIは気付かないところまで作り込まれていて、その分本筋が薄めです。これはスカイリムのようなオープンワールドファンタジーに近いですが、当時のユーザーにはそういった点はあまり届きませんでした(FFがストーリーで売りだしたゲームであることも大きいと思います)。個人的にはFFXIIとXIIIのリリース順が逆だったら、評価はまた変わったであろうと思います。

それでもFFXIIのPS4で発売が発表された時、想像以上に好評な声が上がりました。オープンワールドゲームを一般ゲーマーが触り始め、時代がFFXIIに追いついたというべきでしょうか。ネットでの評価は当時の2chの声に大きく引っ張られていたので、批判が強すぎた状況からやや正常化したとのかもしれません。(まぁ当時のFF批判は、スクウェア自体の問題もあったので仕方ないのかもしれません)

ストーリーの問題にも触れるつもりでしたが、今回はここまでにします。リマスターに関してはまだまだ隠し玉が残っているそうなので、期待して待ちたいと思います。FFXIIは長い間RPG離れしていた私を、再びファンタジーの世界に呼び戻した特別なRPGでもあります。より美しくなった世界へ、早くまた冒険に旅立ちたいですね。




あ、あとFFXII自体の批判はある程度理解できるけど、崎元仁氏の音楽がクソだ!って言うヤツの意見は一理ないぞ(´・ω・`) そいつの耳が腐っているだけだから(´・ω・`)

・・・と、煽って締めたいと思います。FFっぽくないかもしれないけど、和製ファンタジーとして最高クラスの楽曲群だと思います。みんなも聴こう。

続く

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