2015年10月2日金曜日

RPGのマップの「動線」を考察してみよう!

こんばんは、ノンジャンル人生です。
先日TwitterでRPGのマップに関する話題がありました。そこから「遊びやすいマップとは何か」という議論が生まれ、フォロワーの方と様々な意見を交換し合うことが出来ました。おかげさまで自分にはない発想を知ることが出来ましたが、そこでふと思ったのが、
ということです。
「動線」とは建築デザインから知った用語で、「人がどう動くかを示した線」のことだそうです。例えば家の中なら「食卓」や「トイレ」など人が多く往復する場所には線が密集し、あまり使わない部屋の隅などは線が通わない傾向があります。これを意識して建物をデザインすることで、利用者の余計な歩行量を減らして快適さを生むと言われています。

もちろんこれは現実の建物の話ですが、普段何気に通っているゲームのマップにも同じことが言えるのではないでしょうか?よく思い出してください。

多くのRPGで宿屋は町の入口近くにありませんか?

これは偶然皆がそこに配置したのではなく、快適さを求めた結果この場所に置かれるようになったのです。(各々が意図的なのか無意識なのかは不明ですが)

RPGのマップって、実は重要なゲームデザインが隠されているのではないでしょうか?今回はこの「動線」を考察していこうと思います。一応ツクール製RPGの見下ろし型マップを想定した話ですが、考え方次第では3DRPGや他ジャンルにも応用できると思います。



さて、こちらは現在製作中のゲームに登場する街マップです(なにげに初公開ですね…)。拙作の単純なマップですが、説明しやすいので例として取り上げます。この街にある施設の役割は
「宿屋」…回復&セーブ
「酒場」…編成&情報収集
「道具・装備屋」…購入
「初心者の館」…情報収集
「民家」…情報収集
です。これに動線を足すと…

①初めて街に入った場合
書いた線が動線です。1度目だと多くのプレイヤーがすべての施設を回ると思います。この線は施設同士を繋いだものですが、実際の場合はもっと短いルートでショートカットすると思いますし、樽を調べに裏まで回ると思います。

②2回目以降の場合
一方二回目以降に街に入った場合、情報収集をする必要がなくなるので最低限の移動になると思います。最も少ないパターンだと入り口と宿屋の往復のみです。次いで道具屋、必要があれば酒場にいくと思います。

①と②を比べると②の動線の方が大幅に少なくなっています。プレイヤーは必要ない場所には無駄に行かないので、そういった施設は1ブロックにまとめることを意識して配置しました。更にセンスのある方なら、美しさとオリジナリティを兼ね備えつつ、もっと快適な動線にできると思います。逆に何も考えずマップの端から端まで歩くような場所に配置してしまうと、プレイヤーにストレスが掛かりやめてしまう原因になりかねません。こういったバランスが本当に難しいですね。

ちなみに動線はただ短ければいいのではなく、街の景観を見せるためにあえて長めにしたり、迷路にしてプレイヤーを遊ばせることも出来ます(過度だとストレスになりかねませんが)。あと、動線上に余計なイベントやオブジェクトを置くと余計な回り道になるので注意が必要です。装飾はできるだけ動線の外側に配置するといいと思います。

では次。
今度は草原ダンジョンマップです。これはゲームで初めて入るダンジョンの1マップ目であり、実質のチュートリアルステージです。戦闘はシンボルエンカウント式で始まります。敵シンボルや宝箱の他に、情報を教えてくれる冒険者もいます。中央にはモンスターが多めにわらわらいます。

こちらが動線ありです。街マップに比べると大きな分岐が多く、プレイヤーが行ったり来たりしながら進むと思います。先ほどと逆で、あえて邪魔になるよう動線上に敵シンボルを配置しています。こうすることで敵と戦うか回避するか考えるきっかけを作ることが出来ます。モンスターの群れに関しては、「敵が多くても倒したり回避したりすることで突破できる」ことを学習させるための仕掛けです。

また、どう動くかわからないプレイヤーをある程度コントロールするために、宝箱を配置しております。多くのプレイヤーは画面内に宝箱があった場合、優先的に回収に向かいます。その直線上を繋ぎつつ敵シンボルを配置してゆくといい感じになります。ただし画面外にある宝箱の場所をプレイヤーが知ることは出来ません。誘導には限界があるので注意です。

ここまで自分のゲームで動線を紹介してきましたが、過去の名作と呼ばれるRPGには優秀な動線が設計されたものがたくさんあります。特に「ドラクエ1」の動線は非常に優秀な作りになっており、学べるところが多いです。例えばラダトームを出た所からちらっと見える竜王の城は、目的地をはっきりさせる役割があります。ラダトームは拠点としての機能を備えた町の原点です。洞窟内で視界を狭くするのは、ダンジョンの簡単に把握することを防ぎ、狭いマップ全体を歩かせるためです。


このように動線はRPGのゲームデザインと密接な関係性があります。普段何気なく遊んだり製作している方でも、これを意識するだけで見えてくるものは違ってきます。作る方なら意識してゲームを遊ぶと大変参考になるはずです(まぁ、だからと言って「このゲームの動線の出来は悪い!」なんて言いふらしていたら、建築業界の方に失笑されるでしょうが…)。

今回の話題を通して様々な方のマップを見る機会を得、自分でも勉強になりました。より面白いマップ作りを目指して試行錯誤していきたいと思います。