2015年7月29日水曜日

電撃発表された『ドラゴンクエストⅪ』から、ドラクエの販売戦略を紐解く

どうも、ノンジャンル人生です。いやー、とんでもないニュースが入ってきましたね。国内RPGにおける金字塔「ドラゴンクエストシリーズ」の最新作が公式の場で発表されました。タイトルは『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』。しかもソニーの据置機、任天堂の携帯機への変則的な提供は衝撃的でした。PS4と3DSの画面を見てさらに驚愕!簡単には説明できないので、ドラゴンクエストのハード移行の歴史を紐解きながら解説してゆくます。相変わらず疎い知識で語るので、間違いや抜けがあればご了承を。

まず、「ドラゴンクエストシリーズ」がどういった経緯で普及していったのか、簡単にまとめてみます。

①ファミコンで1から4までが発売され、爆発的な人気を博す。社会現象とまで呼ばれる。
②スーパーファミコン5・6とロト3部作のリメイクが発売され、RPG黄金期を支える。
③プレイステーションの7では、FFシリーズに遅れをとるもハード最大のソフト売上を記録。4をリメイク+初の追加シナリオ。
④プレイステーション2で5リメイクと8が発売され、8が再びハード最大のソフト売上を記録。エニックスとスクウェアが合併。
⑤ニンテンドーDSで4から6までのリメイクが発売。同機で9が発売され、ドラクエ史上最大のヒット作になる。
⑥25周年でWiiにロト三部作のFC・SFC版をセットにしたものを発売。Wiiでドラクエ10が発売(後にWiiUとPCでも発売)。10は初のオンラインタイトル。
⑦スマートフォンでシリーズを移植。3DSで7と8をリメイク。
(リメイク・移植は他にMSX・GBなどもあり)

ひと通り流れをみると、ある特徴が分かります。それはその時期に最も売れているハードでナンバリングタイトルを出すということです。ハードが任天堂機やソニー機、据置機や携帯機とガンガン変わっているのにも理由があるんですね。また、リメイクを定期的に出し、昔ドラクエを遊んだファンだけでなく、まだドラクエを触ってない世代にも普及させようとしているのが見受けられます。スクウェア・エニックスはとても手堅い販売戦略を展開してきたと思います。

しかしここで大きな問題が生まれました。それは「ドラクエに対してユーザーが求めるものが乖離し始めた」ことです。ゲームハードの進化は、美しいグラフィックと高度な処理をもたらしてくれました。ドラクエも7以降マップが3Dとなり、より広大な世界を冒険出来るようになりました。一方、3D化した表現の違和感に対して「これはドラクエではない」と訴えるユーザーが出てくるようになりました。彼らにとってドット絵のドラクエは原体験であり、ドラクエに対し本当に求めているものなのです。また、国内ではソニーと任天堂の両メーカーに対するファンは根強く、自分の所持するハードに来てほしいと願っています(ハード戦争とネットでは言われていますが、あまり出費をしたくないというのが一般ユーザーの本音だと思います^^;)。さらにゲームはじっくり据置機で遊びたい派とパッと手軽にプレイできる携帯機で遊びたい派もいます。これらの問題により、ファン同士の対立やメーカーに対する批判が生まれてしまいました。彼らの言い分は常に、「(自分の対立側)のせいで、ドラクエはダメになった!」というものです。全てドラクエそのものに対する“愛”ゆえなため、解決は難しかったんですね。

そんな状態で発表されることになったドラクエ11、正直自分は今回の発表で対立が一段と深まるのではと思っていました…が、まさか先ほど挙げた「グラフィック表現の対立」「ハードメーカーの対立」「据置機と携帯機の対立」を全て解消してしまうとは、さすがに腰を抜かしました。

まずPS4では海外メーカーに負けないほどの美しいグラフィックを再現しています。光や空気感をも意識して作られており、すぐにでも冒険してみたいというワクワク感があります。また戦闘の形式は従来のドラクエと同じなので、高度なグラフィックのまま誰でも遊びやすくなっています。現在のPS4の洋ゲーの多くがライトユーザーに敷居が高いことを考えると、国内メーカーだからこその配慮を感じられます。

次に3DSでは上画面をデフォルメされた3D、下画面をSFC時代のような2D で表現しています。これが当日一番驚いたことです。今まで携帯機ドラクエで培ってきたノウハウを生かしつつ、古参ユーザーを満足させる表現もしています。さらに戦闘画面は3D・2Dを切り替え可能!自分の好きな方式でドラクエを遊ぶことが出来ます。高性能のPS4とはまったく違う、3DSの特性を上手く活かした作りは、まさにアイデアの勝利であると思います。

2つの機器での発売は、PS4は海外を、3DSは国内を意識した販売戦略でもあります。ただファンのためだけではなく、ドラクエの販路拡大をしっかりと見据えていることが分かります。これだけ多くの要素を同時に解決したのは凄いですね。


ここまでドラクエ11を絶賛してきましたが、まだまだ第一報でしかありません。本当にファンの期待に答えられるものかどうかは、ストーリーやゲームシステムなど、ハードやグラフィック以外の要素が絡んできます。しかし今回は30周年だからこそ気合が入っているのがひしひしと感じられます。いちRPGファンとして、続報を暖かく見守ってみようと思います。


【おまけ】
NXでの販売を検討していると、最後にさらりと爆弾発言をしましたね。NXが任天堂第三のハードとして売る予定であることから、現行機種とはまったく違うアミューズメント型のパターンもあるのではと思っていましたが、ドラクエが出るとすると違うでしょうね。そうなるとやはり据置と携帯の複合型が近いのか…?本当に謎なハードです。


2015年7月20日月曜日

銀河にねがいを 岩田聡氏を偲んで

訃報を知ったのは一週間ほど前でした。任天堂の公式ツイッターで流れてきたのは「岩田社長」が逝去したという文章。見た瞬間、「え!?」と思わず声を出してしまいました。任天堂の顔として表舞台に立ち、ニンテンドーダイレクトでも愛嬌があってユーモラスなプレゼンを行ってきた名物社長。たぶん、国内で最もユーザーと近い目線を持った経営者であったと思います。

訃報の次に流れてきたのは、多くの方の悲しみの声と岩田氏の功績を称えるエピソードでした。プログラマーとしての才覚、先代山内氏によって見出された経営手腕、DS・Wiiでの歴史的成功、糸井重里氏との友情。どれも後世に残すべき素晴らしいことだと思います。

でも、自分にとっての「岩田聡」という人物の思い出は、まったく別のところにあります。それはスーパーファミコン用ゲームソフト『星のカービィ スーパーデラックス』の最後の物語、『銀河にねがいを』のエンディングです。

自分が子供の頃はじめて買ってもらったゲームハード『スーパーファミコン』。購入してもらってからは『カービィボウル』や『スーパーボンバーマン』などを遊びましたが、当時はどのゲームも難しく、エンディングを見れたゲームはありませんでした。そんな中で知ったスーパーデラックスというゲームのCM。

「カービィちゃん、カービィちゃん、スーパーデラックスカービィちゃん」
「ふたりでアクションカービィちゃん」
「6つのゲームでカービィちゃん」

あのわけの分からないCMに釣られて買った、木箱に似せたパッケージのゲーム。そこは自分にとっての夢と魔法の世界でした。今だったら「ポップで美しいアートワーク」「初心者でも直感的に遊べる操作感」「プレイヤーごとに違った攻略体験が出来る自由度」なんて文章を書くかもしれません。しかし、そんな理屈など関係なく、ただ、ただ、その世界に夢中になりました。ひとりで、あるいは妹や友達と、宝が眠る地の底や世界を支配しようとする戦艦を何度も駆け抜けました。

そして『銀河にねがいを』という物語。最後だけあり、子供の頃の自分にとってはまさに“難関”でした。幾つもの星を巡り、ノヴァの体内でのシューティングを越え、たどり着いたラスボス「マルク」との決戦。恐ろしげな姿と声で襲ってくるマルクとの戦いは、まさに子どもながらに演じた死闘でした。ゲームオーバーになりながら何度も挑み、ついに与えた最後の一撃。ノヴァが弾け、ワープスターと共に凱旋するカービィは、自分にとってのヒーローであり、かけがえのない自分の分身でした。

そしてカービィの寝顔と静かなオルゴールとともに始まる『銀河にねがいを』のエンディング。それは、自分の力ではじめて迎えたゲームのエンディングでした。空に高く流れてゆくスタッフ名とカービィのイラスト。その中に偉そうな格好をしたカービィと、「プロデューサー」岩田聡・宮本茂の名前がありました。これが岩田氏と自分との出会いです。もちろん当時はどんな人なのかまったく知らなかったですが、なんとなくえらい人だとは分かりました。

スーパーデラックスはたくさんの思い出を残してくれました。冒険は一度きりでは終わらず、何度もエンディングを迎えました。カービィの漫画を描いて友達や先生に褒められたりもしました。スーパーデラックスは自分の今までの人生において、最も大切で、最も大好きなゲームです。

その思い出には、仕掛け人・岩田聡が後ろにいたのです。岩田氏がもしHAL研究所を再建していなければ、自分のそんな思い出はなかったのだと思います。

そして、大人になってからの再会。話題作りと言う不純な動機で買った3DS。しばらくは持て余したものの、一度崩した体調が落ち着き始めた頃から、積極的に触るようになりました。そしてそこには元気よくプレゼンをする岩田氏の姿がありました。辛く苦しかったことはたくさんありましたが、岩田氏の紹介するゲームに救われたことが何度かあります。

偉大なクリエーターでありながら、どんなクリエーターよりもユーザーの近くにいた岩田氏。その短くも太い人生は、多くの人に笑顔を届けられた人生だと思います。もちろん、自分も笑顔を頂いたひとりです。

岩田氏は世界中が悲しんでいる様子を銀河の星の彼方から見ていたのでしょうか。もしノヴァに願うなら、岩田聡氏のご冥福と、彼の蒔いた種がまた多くの方を笑顔に出来るようにと伝えたいです。

2015年7月2日木曜日

なぜRPGの『毒』は役に立たないのか?

7月ですね。どうも、ノンジャンル人生です。FEif欲しいんですが、いろいろあって買うことが出来ません。NEW3DSLL白も欲しいです。ツクールのVXAceも欲しいです。イカもやってみたいです。買えません。哀れ。

で、今回はRPGにおける『毒』について考察しようと思います。ほとんどのRPGで序盤から登場する状態異常としておなじみですね。ちょっとずつ減ってゆくHP、歩くと画面が点滅してうざったいと思った人は多いと思います。余計に買っておいた毒消し用アイテムをちまちま使いながらダンジョンを攻略することは、もはやRPGの定番・お約束と言えます。

ただ、それはあくまでモンスター側がプレーヤーキャラに使う時の話。プレイヤーがモンスター側に攻撃手段として使う『毒』について疑問に思われたことのある方はいらっしゃるでしょうか?よくRPGでは毒状態にする魔法を覚えますが、覚えたきり一度も使ったことのない人は結構いるはずです。理由は、多くのRPGの『毒』は致命的なほど役に立たないから。少ないダメージ、ボス戦での成功率の悪さなど、さまざまな問題を抱えているのが毒なのです。そんな毒について、詳しく紐解いてゆこうと思います。今回も長めです。


毒というとドラクエのイメージを思い浮かべる人は多いと思いますが、実はドラクエには相手に毒を与える呪文は存在しません。「どくの息」という特技はありますが、プレイヤー側の技としてはシリーズでもマイナーです。一方FFだとポイズンやバイオという魔法があります。前者は毒のみをかける魔法、後者は毒+ダメージの魔法です。他の有名RPG、無名のRPGでも魔法使いが毒魔法を習得するケースは多いです。

しかしその割に使ってもらえない毒魔法。その問題はダメージの計算方法にあります。多くのRPGでは毒のダメージを「HPの割合」を元に計算しています。例えば「HPの10%前後のダメージを与える」のパターンだと、HP100のキャラクターは毎ターン10のダメージを受け続けることになります。しかし一般的なRPGの雑魚戦は1~3ターンほどで終わってしまう傾向にあります。その場合わざわざ少ない、かつ遅効性のダメージのために一回分の行動を割く必要があるのかという問題に直面してしまうのです。

もっと具体的なことをあげます。例えばHP100ほどの敵が三体いて、それに対し味方が三人いるとします。大半のRPGだと1ターンに一体以上は敵を倒せるように設計されています(あまり一体にターン数がかかると、プレイヤーは投げ出してしまうからです)。そうなると味方ひとりあたりのダメージの期待値は最低でも30~50ほど。それと比べると1ターン分の毒の10ダメージはあきらかに小さすぎます。さらに敵のHPが200に増えると期待値は100に対し毒は20、300に増えると150に対し30と、どんどん差が開いてしまいます。これがダメージの低さを感じる原因なのです。

じゃあだったら毒でHPが減る割合を大きくすればいいかというと、それはそれで問題が発生します。例えば期待値と同じ30~50ほどのダメージを与えるためには、HPの30~50%の割合で減らし続けなければいけません。そうなると、今度はプレイヤー側が食らう毒のダメージが大きくなりすぎてしまいます。ダメージと毒の両方の回復にリソースを回さなくてはいけなくなり、攻撃に手を回すことが出来ません。安直に割合だけ増やすのは、自らの首を絞めるだけになります。


一方ボス戦に目を向けると、ボスに毒の状態異常が成功しないケースが多いです。毒に完全耐性を持っていることも少なくありません。HPが多いボスならば毒を有効に活用できそうですが、わざわざ失敗するようにしているのには理由があります。例えば先ほどのようにHPの10%の割合でダメージを与えられるとします。そうなるとHPをゼロにするには10ターンかかります。この場合、最適な作戦は、ただ10ターン防御し続けることです。こうすればプレイヤーが何も考えなくても敵は勝手に倒れてくれます。シンプルですが非常に強力な作戦です。しかし、RPGにおいて華であるボス戦すべてでこの方法で勝利できるとしたらどうでしょうか?どんな相手でも同じことをすればいいだけなので、ボス戦がとてもつまらなくなるのが目に見えて分かります。だから毒は効かないのです。


こういった問題があったため、毒は役に立たなくなってしまいました。毒魔法を習得しても魔法欄に置物のようになってホコリをかぶっていること、ありませんか?個人的に、せっかく習得しても役に立たないならつまらないなと思います。ならば逆に、今度は毒を有効に活用した例をあげようと思います。

毒の見直しで有名なのは『世界樹の迷宮』。このゲームの毒はHP割合ではなく固定ダメージに変化しています。そして恐ろしく強い上に序盤から猛威を振るいます。そして自身が使えば強力な戦力にもなります。被ダメージ量は多くても、もともと緊迫感のあるダンジョン探索が売りのゲームなので、このゲームとの相性はバッチリです。(世界樹はPQしかやったことが無いため、詳しい解説が出来ないのが残念です^_^;)
※追記:世界樹の迷宮Ⅳを2016年にクリアしました。毒の使い勝手は最高でした。強力な固定ダメージであり、ボスにも有効、なにより使っていて楽しかったです。

先日プレイしたフリゲRPG『嘘つきジニーと磔刑の国』も、良く考え抜かれていました。今作は毒ではなく「衰弱」という名前(効果は実質毒)。状態異常には深度というものがあり、何度も衰弱技を使って深度を上げると、その分与えるダメージが大きくなるというもの。ボス敵にも有効、それどころか相手によっては必須といえるほど強力な火力を発揮するのが面白いなと思いました。短編かつ高難易度RPGなので、興味をもった方は触ってみるのをオススメします。

嘘つきジニーと磔刑の国

その他のRPGでも、HPだけ多い敵への対策手段として毒が有効だったり、一部のボス敵に効いたり、能力値減少の追加効果があるなど、しっかりと設計されているゲームもあります。効果や有効な場面を考えれば、毒をゲームを面白く要素として活用できるのです。

いかがだったでしょうか。RPGにおいて何気なく存在する毒にも、面白いほど考察の余地があります。作る側にはぜひ再検証してもらいたいですし、プレイヤーもゲームごとに役に立つかどうか考えてみて欲しいですね。



おまけ
現在自分が作っているフリゲ用RPGでも毒のダメージ計算の見直しをしています。具体的には、毒を食らった側の「力(STR)」の値をダメージに出来ないかというものです。まだまだ実験の段階ですが、今のところバランス的に良好です。雑魚戦では優秀なダメージソースになる上、ボスでもダメージがインフレしません。屁理屈的には、力有り余っている奴はダメージ受ける量も大きいって感じです。もうちょい調整しつつ、面白いゲームができるよう仕上げたいと思います。