続きです。
前回ではターン制RPGの戦術は進歩していないと書き込みました。しかし裏を返せば、RPGの戦闘はまだまだ面白くなる余地があるのです。
戦術を語る前に、まずは戦術の定義から書いてみます。
戦術とは勝つための具体的な方法のことです*1。類義語として戦略というものがありますが、こちらは勝つための総合的・長期的な計略のことを指します*2。
ターン制RPGにおいてそれぞれがどこに当てはまるかというと、
ターンが回ってきた時にどういった行動を取るのか決めることが戦術
戦闘前に装備・スキル・パーティ編成などを決めることが戦略
に当たります。
ちなみにRPGの戦略は、ハードの進化とともに様々な発展をしました。例えばジョブシステム、スキルツリーなどはプレイヤーの好みに合わせて自由に考えることができ、育成こそRPGの醍醐味だという人も多いでしょう。
それに比べ、なかなか発展できなかった戦術。前回では基本的な戦術を紹介しました。しかしこれが生かされずに、実際やっていることは「殴って回復する」だけのケースはたくさんあります。この状況を生み出している原因のひとつに「戦闘におけるランダム要素」があります。
多くの敵キャラクターの行動にはこんな設定がされています。
1.自分が使用できる技リストの中から、次の行動を一定確率で選択する
2.プレーヤーが操るキャラクターの中から、行動対象を一定確率で選択する
3.選択した行動は、一定確率で成功する
こうすることで、敵キャラは様々な攻撃を行います。技数を増やすほど敵の行動バリエーションが増え、敵キャラクターの個性を演出するのにひと役買っています。
敵がいろいろな行動をしてくるため、一見すると戦術の幅を広げているランダム要素ですが、これには大きな落とし穴があります。相手が何をしてくるかが分散すると、ターンごとの駆け引きの必要がなくなってしまうのです。
沈黙の魔法を使う確率&痛手になるキャラが狙われる確率&魔法が成功する確率
上記のすべて揃わないと効果が発動しないからです。
ゲームを面白くするには、駆け引きが必要です。この行動は有効かどうか・相手にどう対策を取ればいいかを考えることは、戦闘に緊張感と達成感を与えてくれます。しかし次にしてくる行動や対象が分散すると、駆け引きが行われる前に戦闘が終了する可能性が高まります。結局そういった行動は無視して殴るだけのケースが跡を絶たないのです。
プレイヤーがいかに自分で戦術を考え、単調なプレイにならないようにするためには、敵の無駄な行動をなくし、効果的な行動を使用してくる確率をうまく調整してゆく必要があります。
だったら、確率だけをいじればいいのかというと、それにも問題があります。なぜなら確率はあくまでも目安であり、信頼できないものだからです。20%に設定した行動は、本当に5回に1回発動するかというと、実際はそんなことはないです。5回のうち0回だったり、3回だったりすることは皆さんもよく体験していると思います。
かといって、敵の行動をターンごとにガチガチに決めてしまうと、パターンがわかってしまうためゲームを単調にしてしまいます。このバランスは、本当に難しいのです。
で、戦術とランダム要素の問題に真っ向から挑んだRPGがありました。
フリゲ短編RPGの傑作「ふしぎの城のヘレン」です。
次回はこのゲームを通して、戦術の進化の先について書こうと思います。
・・・・てか、今回で話がまとまりませんでした。ゆるして。
追記:現在のコンシューマーのRPGに戦術がないということではありません。RPG界をけん引するスクエニとアトラスは、不遇だった行動(例えば盾役やステータス異常の有効性)を見直すことで、プレイヤーに様々な戦術の必要性を痛感させてきました。むしろそういった面も含めて常に考えてきたからこそ、生き残ったのかもしれません。
*1参照:コトバンク https://kotobank.jp/word/%E6%88%A6%E8%A1%93-88365
*2参照:コトバンク https://kotobank.jp/word/%E6%88%A6%E7%95%A5-89017