2017年3月9日木曜日

『芥花』記事のあとがき&おこなという少女の物語についての考察。

どうも、ノンジャンル人生です。先日もぐらゲームス様にて、『芥花』の記事を寄稿しました。とは言っても先月ですけどね…。ちょっと今年の冬はまったくダメなカンジがするので、春まで力を蓄えたいところです。


というわけでいつも通りあとがき。
『芥花』は「フリゲ2016」で高い評価を受けていたのは知っていましたが、触ったのは1月に入ってから。拷問というテーマなのでキツめの内容かと思いきや、繊細かつミステリアスな展開が待ち受けており、一気にのめり込んでしまいました。

デスゲームを題材にしたホラー『徒花の館』が近い時期に配信していたので注目度がやや分散されていた感はありましたが、ゲームとしてはまったくの別物です。ADVチックであれど『芥花』はやはりRPGとしての魅力が詰まった作品だと思いました。(徒花の館の記事はこちらをどうぞ)



記事に書いた通り物語や戦闘が素晴らしい本作ですが、それだけでなくユーザビリティの高さもポイントだと思います。物語・探索・戦闘という楽しみを削がないために、余計なものは徹底的に省いているのが見事。例えばRPGのお約束であるレベルがないのにも関わらず、本作にとってまったくマイナスになっていません。プレイヤーが最終決戦に勝てるよう、戦い方を学習させるための最小数の戦闘を過不足なく用意しています。一方必須ではない雑魚戦は、それでも戦闘が苦手な人のためのアイテム稼ぎ用として完全に割り切られており、上手い人から苦手な人まで遊ばせるようバランスが取られています。

必要な戦闘のみで構成されているため、物語のスピード感を削ぐことなく、プレイヤーを没頭させることに成功しています。緩急のある展開と散りばめられた謎のおかげで、中だるみすることなく進められました。戦闘自体も戦う悪魔の個性を活かした戦法を取ってくるので、物語と戦闘の融合具合もバツグンですね。

一方戦闘のないビョウドウ編は、じっくり考えることが出来る進行で、ミステリーの魅力を存分に発揮していました。このトリックは面白いなーと思いました。芥花という作品ならではの回答だと思います。

今回記事にできて本当に良かったです。ゲーム制作の勉強にもなりましたし、卓越した物語構成にドキドキしながらプレイしました。なにより皆カワイイ!!喋らない系主人公の芥花ちゃんも、意外に表情が豊かでキュートです。あと、イングリド様が楽しそうで何よりです。





以下ネタバレ(ガチでネタバレ語るので全編未クリアの方は見ないでね)













登場人物達は皆魅力的ですが、個人的に刺さったのは「潟湖辺 おこな」。一周目に変貌を遂げたおこなの物語を追ったことが、このゲームにハマった一番の理由かもしれません(セイラとともに館を出るルートです)。劣等感に苛まれた彼女が、内なる自分の開放と暴走の果てに、絶望に満ちた最期を辿るのが強烈でした。

しかし、彼女の死因に至るまでにしでかしたことの大きさと、彼女が抱えた内面の不安の小ささは実にアンバランスです。自身が犯した軽い罪によって、スクールカーストの低いところに落ちるなんてことは、人から見ればごくありふれた話。彼女の物語の中には、ナナの家のような異常な事情は見えないですし、文女のような絶対助からない病があるわけでもありません。(もちろん示唆されていないものの、彼女に対するイジメがあったのかもしれません。しかし正義感が強いセイラがいる以上、彼女に守られてきたのではないかとも思います)

それが大量殺人を実行しようという、突拍子もない行動に至ろうとすることが、逆に生々しさを感じました。

大人びた作風で忘れがちですが、彼女はまだ中学生の少女。人生の経験は足らず、目の前に見えるすべてが彼女にとっての敵だと思い込んでいます。その脱出として選んだ大量殺人による自己のアピールという手段も、まるで漫画の模倣のようですし、実際失敗に終わっています。肥大化する被害妄想と、空想を実現できると思ってしまう危うさ。これは思春期の頃誰もが持つ感情だと思います。10数年間しか生きていない彼女にとって、今の苦痛こそが、その他の命よりも遥かに重いことなのです。

そして地獄で悪魔の魔法を手に入れたおこなは、そのタガを外していきます。空想を現実にすることが出来る力を得た彼女は無敵な振る舞いをします。ラスボスという意味では、透香と並んで十分に任せられるキャラだったと思います。とても危うく、故に人間味あふれたおこなの物語は、記憶に残るエピソードだったと思います。

あと、もしおこなの告白にセイラが数日早く返答していたら、物語はどう変わっていたのでしょうね…。


おまけ。おこなのペア、ぶりっ子プリシラの台詞、大好き。


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